ST介護職の考え事

認知症・高次脳機能・ケアについての覚え書き

【特養STが選ぶ】生活を見据えた高次脳機能障害対応(リハビリ)おすすめの本

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高次脳機能障害】の生活支援に関するおすすめの本

 

今回はまた本のご紹介です!

テーマは「生活を見据えた高次脳機能障害支援」

 

◆目次◆

 

「数唱の桁が増えたところで、キャンセレーションが速くミスなくなったところで、この患者さんは家で今まで通りに生活できるの?元の仕事に戻れるの?そこはどう評価して、どういうプランを考えてるの?」

 

1年目の夏。何もわかっていないまま、教科書通り記憶障害があるからこれ、注意障害があるからこれ、と机上課題を行った際、すぐにコーチから指導を受けました。

 

【実際の生活につなげるアプローチ】を、養成校では実はほとんど教わりません。

 

養成校では個別機能に対する知識・アプローチを多く教わります。

しかし実際の高次脳機能障害への対応では、神経心理ピラミッドや山鳥モデル、神経心理循環のモデルで表される階層性や相互関係を理解した上で、「個別機能」よりも基盤の部分から評価・訓練を行っていく必要があります。

 

記憶障害、注意障害などの機能障害に対する個別的なアプローチではなく、

高次脳機能障害と共に生きる人」をどう支援していくか?

机上で行う個別の機能ではなく、生活していくための力を上げていくにはどうしたらいいか?

 

そんな疑問へのヒントになる本をご紹介していきます。

加えて、「高次脳機能障害の生活支援」について調べるなら、この先生の著書や論文を見ればとりあえず大丈夫!という方々をピックアップしていきます。

 

 認知関連行動アセスメント 森田秋子

 

高次脳機能の評価にCBAを使うところも大分増えてきたのではないでしょうか?

この本はずばりそのCBAの本です!

6項目の評価基準が丁寧に書かれていますが分かりやすい!CBAを使うなら、まずこの本で勉強しましょう。

ST以外の他職種の方でも、抵抗感なく読むことができると思います。

個別機能ではなく、全体的な高次脳機能の評価を行うことが高次脳支援の第一歩です。

 

最近出版された新しい本もあります。

こちらはまだ購入できてないのですが、是非読んでみたいです! 

 

CBAについてはまたどこかで詳しくまとめます。

こちらで少しCBAについて触れているので、ご興味ある方はぜひ。

 

ryo-kobayashi.hatenablog.com

 

 CBAを作成されたのが、著者である森田秋子先生です。

 高次脳機能、基盤的認知機能に合わせた介入方法・支援方法について調べたい時には、森田先生の論文や著書を調べてみるとよいと思います。

 

失語症の評価(発語失行と音韻性錯語・構音障害の判別)についても、森田先生の著書から勉強させていただきました。

(Ex.母音の完全な置換→発語失行では起こりにくい→音韻性錯誤の可能性大)

 

臨床のよくある場面を切り取るような形で、患者さんの反応を例に挙げて書いてくださっているのでとても分かりやすいです。 

 

森田先生は積極的に研修を開催してくださっています!!

コロナ禍の現在でも、オンラインに切り替え研修を続けていらっしゃいます。

高次脳対応・失語症悩んでいる方は、是非一度参加されると明日からの臨床が楽しく、より気合が入ると思います!!

認知関連行動アセスメント(CBA)公式サイト: https://www.cba-ninchikanrenkoudou.com/

 

生活を支える高次脳機能リハビリテーション 橋本圭司

 

 
橋本圭司先生は高次脳機能障害の地域リハビリテーションに力を入れていらっしゃるリハビリテーション医師です。
前回記事でご紹介した、【神経心理循環】モデルを提唱された先生です。
 
【神経心理循環】に触れた記事はこちら↓↓

 

ryo-kobayashi.hatenablog.com

 

ご家族向けに分かりやすい言葉で、高次脳機能障害のよくある症状に対して「どうしてそうなってしまうのか?」「その症状が出たらどうしたらいいのか」「どうしたらよくなっていくのか」が書かれています。

「ご家族向け」といってあなどることなかれ!!!

リハ職が見ても、「明日あの方にこれをやってみよう」「あの方の対応をこんなふうに変えてみよう」と思う部分が必ずあります!

 

リハビリ方法部分もとても勉強になりますが、神経心理循環モデルの考え方も高次脳リハを行う上で頭に入れておくと理解しやすくなる部分が増えます。

 
 先生の著書ではこちらもおすすめです!

 
 

高次脳機能障害と家族のケア 渡邊修

 
高次脳機能障害・頭部外傷リハビリテーションの大家であるのが東京慈恵医科大学リハビリテーション医師の渡邊修先生です。
 
前頭葉障害・社会行動障害に対する対応・復職支援・生活期リハについて考える際には、一度先生の論文を読んでみることをおすすめします。
 
脳卒中患者の高次脳機能障害への対応:
脳外傷者における通院プログラムの試み:
 
渡邊先生も関東圏でよく研修や講演を行われています。
まとめて情報が載っているところを見つけられておらず、ちょくちょく検索して開催予定を見つけたら申し込む、ような感じで私はいます。
病院所属の方は研修案内などのお知らせがきっとくるかと思いますので、渡邊先生の研修あったら是非参加してみてください!
 

前頭葉機能不全その先の戦略ーRusk通院プログラムと神経心理ピラミッド 

 
Ruskは「神経心理ピラミッド」モデルを提唱した、ニューヨーク大学脳損傷通院プログラムです。
「神経心理ピラミッドに基づいて介入しよう!」と思っても、じゃあどうしたらいいの?となってしまうかと思います。
神経心理ピラミッドとは何か?神経心理ピラミッドに基づいた介入方法、障害を代償する方法を【習慣化】させていく過程が、とても丁寧に書かれています。
 
個別機能ではなくて、基盤的な機能(神経心理ピラミッドの基盤の方)に対するアプローチ方法が特に勉強になります。
 
Ruskのプログラムは「自分で障害を代償する戦略を使えるようになること」が目標にあるので、こちら側からの働きかけ+本人に意識付けすることの両方のアプローチが載っています。
 
外からのヒントでできることを、徐々に内在化して自分でできるように支援していく、という道筋を考えていく大きなヒントになります!

日々コウジ中 

 

 
「生活の中の高次脳機能障害」のイメージを掴むのにぴったりなのが、この「日々コウジ中」
脳卒中脳出血脳梗塞)により所謂「歩ける高次脳」となった旦那さんとの生活を、奥様が漫画にされています。
 
私たちリハ職が読むと、【病院から出て実際に生活していく上で起こりうる問題点】に気付く契機になります。
 
「記憶障害」が問題なのではなくて、「今日の予定を管理できない」ことが問題。
遂行機能障害」が問題なのではなくて、「仕事の効率的なやり方が自分で見つけられない」「職場までの道のりへのこだわり」が問題。
 
どうしても教科書に載っていた名前と症状で考えてしまいがちな私たちの頭を、「実際の生活視点」に切り替えさせてくれます。
 
ご家族に対して「高次脳機能障害って何?」「うちの旦那はどんなふうになっちゃったの?」ということを伝える際にも、分かりやすい本だと思います。
 

おわりに…

高次脳はとても興味深く、まだまだ未解明な部分が多い領域です。

興味深い分、ともすればその「障害」にフォーカスしすぎてしまう部分が専門職にはあります。(私もそういうタイプでした…)

私たちは「記憶障害」を、「遂行機能障害」を改善するのが目標ではなくて、その方がその人らしい「生活を送る」ことを目標に支援していく存在です。

専門職として大事にするべき視点を忘れずに、一人一人の生活を考えて支援を行っていきたいですね!