ST介護職の考え事

認知症・高次脳機能・ケアについての覚え書き

嚥下障害

刻み食・やわらかい食品は本当に食べやすいか?

今回は「刻み食」「やわらかい食品」について考えていきたいと思います。 口腔機能が低下している方に提供されることが多いこれらの食形態ですが、実は一口大での食形態よりも「食べにくさ」や「誤嚥リスク」「食べる際の疲労感」が増す という研究結果が出…

食事の自力摂取に「真っすぐ座る」ことが大切な理由

今回のテーマは「自力摂取と姿勢」です。 食事介助時の姿勢がスムーズな摂取と誤嚥予防に重要であるのと同様に、自力摂取においても姿勢はとても重要です。 食事を介助で行う時の姿勢の優先度は「誤嚥しにくい」が先になることが多いですが、自力摂取できて…

水分をゼリーにするか?とろみにするか?-評価・考え方のポイント

とろみとゼリー ゼリーの特性 とろみの特性 おわりに… 水分の形態はゼリー/とろみ(濃い・中間・薄い・ごく薄い)で調整されている所が多いかと思います。 ゼリーととろみには、それぞれその特性に応じたメリット/デメリットがあります。 ゼリーを使っている…

特養STが考える「嚥下体操」ー特養・施設で行う口腔体操・嚥下体操

【誤嚥性肺炎】が日本人の死因の上位にランクインしてから、【嚥下】という言葉は一気に耳馴染みのあることばに変わってきましたね。 施設で食事の前に、「口腔体操」や「嚥下体操」を行うようになった所も増えたのではないでしょうか? 何となくやっていて…

サルコペニアによる嚥下障害と舌圧の関係ー高齢の利用者さんは何故嚥下機能が低下する?

サルコペニアによる嚥下障害 脳血管疾患の既往や神経難病等、嚥下障害を引き起こしそうな既往が無いにも関わらず、実際には嚥下に困難を抱える高齢者の方を施設ではよく目にするかと思います。 90歳になってもとんかつをもりもり食べている方もいれば、78歳…

【急変対応】窒息の対応ーもし利用者さんが窒息したらどう対処したらいいか?-

窒息の原因となる食品 窒息してる?大丈夫?をどう判断するか 不完全閉塞時の症状 完全閉塞時の症状 窒息時の対処法 意識のある場合 ハイムリッヒ法 気道異物除去の手順|日本医師会 救急蘇生法 (med.or.jp) 背部叩打法 胸部突き上げ法 意識がない場合 異物…

食形態の特徴と適応ー①嚥下調整食学会分類について+ミキサー食の特徴と適応

今回から何回かにわけて各食形態の特徴と、適応についてまとめていきます。 まずは食形態を考える上でかかせない【嚥下調整食学会分類】についてご紹介した後に、ミキサー食の物性・特徴と適応について勉強したことをまとめていきます。 嚥下調整食学会分類2…

【嚥下障害の食事介助】完全側臥位法のポジショニング/メリット/デメリットー完全側臥位法は重度嚥下障害に効果的か?

◆目次◆ 完全側臥位法とは?完全側臥位法のポジショニング 完全側臥位法のメリット=咽頭側壁に保持できる量が増える 食塊の通り道ー誤嚥と喉頭侵入 食塊の動きと重力の関係 完全側臥位と重力①-嚥下前誤嚥ver 完全側臥位と重力②-嚥下後誤嚥ver. 完全側臥位の…

心血管性の嚥下障害に関する論文(英文和訳)【Dysphagia as an early sign of cardiac decompensation in elderly; case report】

Dysphagia as an early sign of cardiac decompensation in elderly; case report (高齢者の心機能低下の初期徴候としての嚥下障害:ケースレポート) 本文リンク: https://academic.oup.com/ehjcr/article/4/4/1/5859002 【導入】 嚥下障害の定義は、嚥下…

段階的摂食訓練と食形態-嚥下調整食では摂取カロリーが低下する!嚥下評価+栄養評価が大事!

◆目次◆ 段階的摂食訓練 嚥下調整食の学会分類 刻み食・ペースト食では摂取カロリーが低下する 高齢者の栄養スクリーニング・必要栄養量の計算方法 適切な食形態を提供できる施設を目指して… おわりに… 段階的摂食訓練 摂食訓練の基本ーsafe swallow と err l…

食事の姿勢は足底接地が重要!ー牛乳パック足置きの作り方

ベッド上でも、車いす座位でも、食事時には足の裏がしっかりと地面に接していることが必要です。 嚥下と足底接地に本当に関係があるの? と思う方も多いでしょう。 足場が不安定な場所で重いものを持ち上げようとする時を想像してみてください。 しっかりと…

特養STが選ぶ!【摂食・嚥下障害】おすすめの本5選

今回は本のご紹介です。 私が新人の頃から中堅?の現在に至るまで、臨床をともにしてきた本をおすすめポイントとともにご紹介させていただきます。 現在私は「特養ST」なので、「特養」=生活期・高齢者の摂食嚥下障害への対応に使える本を中心に選んでみま…

口腔内衛生状態の評価方法【OHAT使用の勧め】口腔機能向上加算のアセスメント・モニタリングに!

OHAT(Oral Health Assessment Tool)とは? OHATの使い方 OHAT評価項目の注意点 ・口唇 ・舌 ・歯肉・頬粘膜 ・唾液 ・歯 ・義歯 ・口腔内清掃状態 おわりに… OHAT(Oral Health Assessment Tool)とは? OHATの評価用紙は↓のURLからダウンロードできます。 h…

言語聴覚士が伝える「食事介助の基本」

食事の介助とは 食事介助の手順 ①姿勢を整える ②口腔ケア ③食事の介助 ④口腔ケア ⑤姿勢を戻す おわりに… 食事の介助とは 食事介助とは、箸やスプーンを持てない、うまく食事を飲み込むことができないなど、ひとりでうまく食事できない方のために介助を行うこ…

プロセスモデルとstageⅡtransport-液体を噛んで飲むのは危ない!

咀嚼を必要とする嚥下=プロセスモデル Stage Ⅰ transport proessing(咀嚼) 舌の動き 軟口蓋の動き 舌骨の動き stage Ⅱ transport 「牛乳を噛んで飲む」のは危ない 咀嚼を必要とする嚥下=プロセスモデル プロセスモデル 液体嚥下やゼリー・ペースト食の丸…

嚥下のモデルー認知症と先行期障害・その対応ー

嚥下のモデル 先行期 開口拒否への対応 ため込みへの対応 嗜好の変化 おわりに… 嚥下のモデル 今回は嚥下のモデルについてまとめていきます。 嚥下のモデルには大きく「液体嚥下のモデル」と「咀嚼嚥下のモデル」があります。 まずは「液体嚥下のモデル」に…

【頸部聴診】による嚥下機能評価-どんな嚥下音の時に何が起こっているか?

頸部聴診は怖くない! 頸部聴診の方法 嚥下音・呼吸音の評価 頸部聴診を勉強するためにお勧めの本 【咽頭マイク】を使ってみよう! 頸部聴診は怖くない! 嚥下機能の代表的な検査の一つに、「頸部聴診法」があります。 RSST、MWST、FTとSPO2や呼吸状態の評価…

一口量を考える-誤嚥・窒息を防ぐ/スムーズな食事に適切な1口量の評価-

食事介助の現実 一口量はどのくらいが適切か? ①咽頭期障害の有無 ②口腔・咽頭残留 ③口腔期(咀嚼・食塊形成・送り込み)がスムーズに惹起する 食事介助の現実 食事介助 医療にしても介護にしても、基本的に人手不足でどこの現場もとても忙しいです。 食事介…

なぜ「とろみ」をつけるのか?

ムセるなら、とりあえず「とろみ」をつければいいか? 「〇〇さん最近よくムセるから、とろみを濃くしませんか?」 言語聴覚士として特養で働いていると、こんな相談を受けることがよくあります。 「嚥下障害=食事でムセる=とろみをつける」 という単純な…

食事の姿勢について③-のどの構造から考える食事姿勢としての「側臥位」のメリット

咽頭で食塊は左右に分かれ流入する! 食事姿勢としての「側臥位」 完全側臥位法 頸部回旋と側臥位 咽頭で食塊は左右に分かれ流入する! 喉頭 まず、のどへ送り込まれた食塊の流れについて考えてみましょう。 奥舌にそって送り込まれていく食塊は、喉頭蓋で一…

食事の姿勢について②-食べやすい姿勢≠誤嚥しにくい姿勢

「食べやすい姿勢」「誤嚥しにくい姿勢」 特養で働いていると、食事が来たとたんにセッティングしていたリクライニング車いすの角度を90°近くに戻していくスタッフの方がたまにいらっしゃいます。 もちろん良かれと思ってのことです。 「寝たまま食べたら…

食事の姿勢について①-上向き·頚部伸展位はなぜ危ないか?

なぜ頸部伸展位は危ないのか 食事介助の際、「上向きにならないように」「顎が上がらないように」という注意点はどんなものにも記載してあることが多いです。 上を向いている・顎が上がっている状態を「頸部伸展」している状態と言います。 この頸部伸展位は…