ST介護職の考え事

認知症・高次脳機能・ケアについての覚え書き

刻み食・やわらかい食品は本当に食べやすいか?

今回は「刻み食」「やわらかい食品」について考えていきたいと思います。 口腔機能が低下している方に提供されることが多いこれらの食形態ですが、実は一口大での食形態よりも「食べにくさ」や「誤嚥リスク」「食べる際の疲労感」が増す という研究結果が出…

認知症ケアへのElderspeakの影響【英語論文要約】〜不適切な声掛けは介護抵抗に繋がる〜

Elderspeak communication:impact on Dementia care pubmed.ncbi.nlm.nih.gov Elderspeakとは Elderspeak(幼児化、二次的ベビートーク)は、単純な語彙と文法、短い文章、ゆっくりとした話し方、高いピッチと音量、不適切に親しみを込めた呼び方などが特徴で…

認知症患者さんとのコミュニケーションにおけるマスクのデメリット  

認知症患者さんとのコミュニケーションにおけるマスクのデメリット ワクチン接種が広がってきたとは言え、まだまだマスクを外し以前のようにお話することは難しい状況が続いています。 私たちは何気なくつけているマスクですが、特に認知症患者さんとのコミ…

【ABAを用いた認知症BPSD対応事例】トイレでの転倒頻度減少を目的とした介入

セラピストは介入方法を考えるとき、論文検索を必死で行います。 介護現場も対応に困るケースはたくさんあるのに、だからと言って論文を探す人は中々少ない印象を持っています。 ということで、今回は介護現場で活かせる論文をご紹介します! 今後もこのよう…

【介護報酬改定】“科学的介護”LIFEに求められる指標/評価スケール(機能訓練・認知症ケア)

【科学的介護】データベースLIFEに提出するアウトカム指標 機能訓練:バーセル・インデックス(BI) バーセル・インデックスのメリット/デメリット 認知症ケア:DBD13 認知症ケア:Vitarity Index 認知症ケア評価スケールと【介護の質】 介護報酬改定の概要…

食事の自力摂取に「真っすぐ座る」ことが大切な理由

今回のテーマは「自力摂取と姿勢」です。 食事介助時の姿勢がスムーズな摂取と誤嚥予防に重要であるのと同様に、自力摂取においても姿勢はとても重要です。 食事を介助で行う時の姿勢の優先度は「誤嚥しにくい」が先になることが多いですが、自力摂取できて…

応用行動分析の視点から考えるBPSDへのアプローチ

認知症ケアを行う中で、避けて通ることができないのが「BPSDへの対応」です。 暴言や暴力、収集癖や落ち着かないで動いて周る… 「何でこんなことをするんだろう?」 「どうしたら、この行動をやめさせられるのだろう?」 問題となる行動に遭遇するたびに、そ…

水分をゼリーにするか?とろみにするか?-評価・考え方のポイント

とろみとゼリー ゼリーの特性 とろみの特性 おわりに… 水分の形態はゼリー/とろみ(濃い・中間・薄い・ごく薄い)で調整されている所が多いかと思います。 ゼリーととろみには、それぞれその特性に応じたメリット/デメリットがあります。 ゼリーを使っている…

特養STが考える「嚥下体操」ー特養・施設で行う口腔体操・嚥下体操

【誤嚥性肺炎】が日本人の死因の上位にランクインしてから、【嚥下】という言葉は一気に耳馴染みのあることばに変わってきましたね。 施設で食事の前に、「口腔体操」や「嚥下体操」を行うようになった所も増えたのではないでしょうか? 何となくやっていて…

認知症のコミュニケーション障害への対応ー話題の選び方ー

認知症の方にとって「昔の話」が一番簡単なのか? 「認知症になっても、長期記憶は比較的保たれる」 「だから、昔の話題だったら認知症の方でも楽しく話せるだろう」 そう考えて話してみて、それでもなんだかうまくいかない…話題がころころ変わってしまう… …

サルコペニアによる嚥下障害と舌圧の関係ー高齢の利用者さんは何故嚥下機能が低下する?

サルコペニアによる嚥下障害 脳血管疾患の既往や神経難病等、嚥下障害を引き起こしそうな既往が無いにも関わらず、実際には嚥下に困難を抱える高齢者の方を施設ではよく目にするかと思います。 90歳になってもとんかつをもりもり食べている方もいれば、78歳…

【急変対応】窒息の対応ーもし利用者さんが窒息したらどう対処したらいいか?-

窒息の原因となる食品 窒息してる?大丈夫?をどう判断するか 不完全閉塞時の症状 完全閉塞時の症状 窒息時の対処法 意識のある場合 ハイムリッヒ法 気道異物除去の手順|日本医師会 救急蘇生法 (med.or.jp) 背部叩打法 胸部突き上げ法 意識がない場合 異物…

【英語論文要約】アルツハイマー型認知症患者のIADLに対する認知リハビリテーション

アルツハイマー型認知症患者のIADLに対する認知リハビリテーション (A randomized cross-over controlled study on cognitive rehabilitation of instrumental activities of daily living in Alzheimer disease) A randomized cross-over controlled stud…

車いす自走・自立判断のカギ【ブレーキ管理】を補助する新しい車いす+「急に立ち上がって危ない」に対応できる車いす

「ブレーキ管理」の外的補助手段ー自動ブレーキ付車いす 「急に立ち上がって危ない」に対応可能な車いす おわりに… 車いす移動自立、車いす⇔ベッド・トイレ移乗自立の判断をする時に、身体機能とともに大きなポイントとなるのが【リスク管理】です。 リスク…

認知症の記憶障害「同じことを何度も聞く」への対応ー記憶障害の外的補助手段ー

認知症の「同じことを何度も聞く」症状への対処法 ローテクエイドーメモ帳の活用法 全面付着の付箋を手の甲や腕に貼る 帽子式目の前メモ帳 ローテクエイド-ホワイトボード・伝言板 ミドルテクエイドーICレコーダー ICレコーダー活用法-アラーム機能- ICレコ…

【ケア・介護に役立つ記憶の評価】行動・会話から「記憶」を評価するー認知症の記憶障害評価②ー

前回は記憶の行動観察評価・評価スケールについてまとめました。 ryo-kobayashi.hatenablog.com それを踏まえて、今回は評価スケールをつけるにあたって、会話や行動から記憶を評価するポイントをまとめていきます。 会話・行動から見る記憶障害の評価 評価…

行動観察での記憶障害の評価-認知症の記憶障害評価-

記憶障害は認知症の中核症状の一つです。 記憶障害の程度や、残存する記憶に関する機能の特性を知ることは、その方のケアをより良いものへするために必要なことです。 しかし、多くの認知症の方に対して、既存の検査バッテリーを用いた評価は負担が大きい+…

食形態の特徴と適応ー①嚥下調整食学会分類について+ミキサー食の特徴と適応

今回から何回かにわけて各食形態の特徴と、適応についてまとめていきます。 まずは食形態を考える上でかかせない【嚥下調整食学会分類】についてご紹介した後に、ミキサー食の物性・特徴と適応について勉強したことをまとめていきます。 嚥下調整食学会分類2…

【嚥下障害の食事介助】完全側臥位法のポジショニング/メリット/デメリットー完全側臥位法は重度嚥下障害に効果的か?

◆目次◆ 完全側臥位法とは?完全側臥位法のポジショニング 完全側臥位法のメリット=咽頭側壁に保持できる量が増える 食塊の通り道ー誤嚥と喉頭侵入 食塊の動きと重力の関係 完全側臥位と重力①-嚥下前誤嚥ver 完全側臥位と重力②-嚥下後誤嚥ver. 完全側臥位の…

心血管性の嚥下障害に関する論文(英文和訳)【Dysphagia as an early sign of cardiac decompensation in elderly; case report】

Dysphagia as an early sign of cardiac decompensation in elderly; case report (高齢者の心機能低下の初期徴候としての嚥下障害:ケースレポート) 本文リンク: https://academic.oup.com/ehjcr/article/4/4/1/5859002 【導入】 嚥下障害の定義は、嚥下…

食事の自力摂取を考える①ー失行・道具の使用障害と食事動作

今回のテーマは 【食事の自力摂取】です。 介護施設、在宅での介護を行う場合は、お食事を自分で食べれるか/介助が必要か、によって介護負担が大きく変わってきます。 食事の自力摂取が可能かどうかの評価・判断は、 ・道具の使用 ・運動機能(麻痺・巧緻性…

【特養STが選ぶ】生活を見据えた高次脳機能障害対応(リハビリ)おすすめの本

【高次脳機能障害】の生活支援に関するおすすめの本 今回はまた本のご紹介です! テーマは「生活を見据えた高次脳機能障害支援」 ◆目次◆ 【高次脳機能障害】の生活支援に関するおすすめの本 認知関連行動アセスメント 森田秋子 生活を支える高次脳機能リハビ…

見当識障害(失見当識)への対応-「今日は何日?」と毎回聞くのはNG×環境にヒントを散りばめよう!

◆目次◆ 見当識障害への対応 現実見当識訓練(リアリティーオリエンテーション/RO) おわりに… 見当識障害は認知症の方の多くに認める症状ですね。 見当識とは 【時間や場所、人物などの周囲の状況を正しく認識する能力】*1のことを指します。 見当識には大き…

段階的摂食訓練と食形態-嚥下調整食では摂取カロリーが低下する!嚥下評価+栄養評価が大事!

◆目次◆ 段階的摂食訓練 嚥下調整食の学会分類 刻み食・ペースト食では摂取カロリーが低下する 高齢者の栄養スクリーニング・必要栄養量の計算方法 適切な食形態を提供できる施設を目指して… おわりに… 段階的摂食訓練 摂食訓練の基本ーsafe swallow と err l…

食事の姿勢は足底接地が重要!ー牛乳パック足置きの作り方

ベッド上でも、車いす座位でも、食事時には足の裏がしっかりと地面に接していることが必要です。 嚥下と足底接地に本当に関係があるの? と思う方も多いでしょう。 足場が不安定な場所で重いものを持ち上げようとする時を想像してみてください。 しっかりと…

特養STが選ぶ!【摂食・嚥下障害】おすすめの本5選

今回は本のご紹介です。 私が新人の頃から中堅?の現在に至るまで、臨床をともにしてきた本をおすすめポイントとともにご紹介させていただきます。 現在私は「特養ST」なので、「特養」=生活期・高齢者の摂食嚥下障害への対応に使える本を中心に選んでみま…

脳卒中で共同偏視が起こる理由

急変対応は何度こなしてもドキドキしますよね…。 先日夜勤時、訪室すると【嘔吐+左方向の共同偏視+痛み刺激に反応無】の状態でした。 救急搬送され、診断は【左の広範な脳梗塞】でした。 皮質の脳梗塞・出血では病側を向く共同偏視が出現し、 小脳出血では…

高次脳機能障害と「気付き」「アウェアネス(awareness)」の障害ー「病態失認」「障害への気付き」に対するアプローチ

気付きの段階 知的アウェアネス以前の段階 知的アウェアネスの段階 知的アウェアネスを促すアプローチ 体験的アウェアネス 体験的アウェアネスを促すアプローチ 「会話」により気付きを促す方法 体験的アウェアネスを促す際の注意点 予測的アウェアネス 認知…

プライバシーポリシー

①個人情報の利用目的 【ST介護職の考え事】(以下当ブログ)では、メールでのお問い合わせ、メールマガジンへの登録などの際に、名前(ハンドルネーム)、メールアドレス等の個人情報をご登録いただく場合がございます。 これらの個人情報は質問に対する回答や…

「耳が遠い」高齢者とのコミュニケーション方法ー老人性難聴への対応·話し方のポイント

難聴の種類 伝音難聴 感音難聴 「老人性難聴」の特徴・話し方のポイント 老人性難聴の方への話し方のポイント 施設・ご家庭でよくある「テレビの大音量」問題対策 おわりに… 「〇〇さん!!」と耳元に口を寄せて大きな声で声掛けをしている…。 どこの施設や…